吉祥のスタッフが蔵元を訪ね、酒造りの現場や造り手をご紹介いたします。

川西屋酒造さんの利き酒会に行ってきました

5月19日川西屋酒造さんにて利き酒会が開催されました

今回は3つのコーナーに分かれて出品されていました。                                                                                              

     平成20年度(今年度)醸造火入れ                    
     平成19年度(昨年度)醸造火入れ
     平成20年度生
 
DSCN0688.JPG♪ まずは20年度火入れから利いてみます
正直言って全体的にまだ粗さが残ります。
特に若水55(純米吟醸)は硬く、酸もとがった感じでした。
それに比べ美山錦、五百万石は多少落ち着いていますが、やはり渋・苦味を感じます。
阿波山田65(純米)、55(純米吟醸)は結構飲める感じで、特に65は燗でも飲めそうな感じでした。
 
全体的にまだ粗々しい印象ですが、今の時期から飲み易いお酒は熟成も期待できず、逆に劣化の恐れもあるので、ある意味安心といった感じでした。
ちなみに蔵元では飲み頃を迎えるまでは出荷しません。 
 
 
DSCN0684.JPG♪ 次に19年度火入れを利いてみました。
 
まずは若水55(純米吟醸)から
「え~」と思わず声を出したのはパートスタッフの田代さん。

全く同じ造りなのに1年経つとこんなに違う、というのがよくわかったようです。
酸も落ち着いており、舌触りもまろやか、やはり飲むならこっち、といった感じです。
 
続いて五百万石
含み香はメロンのようですが派手ではなく、あくまでも自然な香りです。
美山錦は完売のため無し(当店でも美山錦が最も早く売り切れました)。
 
そして雄町60(特別純米)
私は今回最も気に入りました。
落ち着いてまろやかで燗に向く感じです。(燗で飲めば良かった)同じ雄町でも50(純米吟醸)は香りもあり、味の膨らみも豊かです。
5%の精米の違いで、こうも変わるのか、と精米歩合による味の違いが実感できました。
 
続いて阿波山田55(純米吟醸)
こちらも柔らかく、まろやか。
数字程酸を感じないのは山田錦特有の甘さによるものと思われます。
今まではどちらかというと男性的な力強さを感じていましたが、これは優しい女性的な感じです。
 
最後に阿波山田錦純米大吟醸18年度醸造
明らかに今迄とは違います。
立ち香はあまりありませんが、含み香は酒粕のような香り。
京都から来ていた飲食店さん(ほとんど寝ていないそうです)はこれを燗で利いていました。
これは面白いということで、私もいただきました。
甘さが格段に広がり、温度の違いによる味の違いは歴然、甘口が好きな方に好まれそうな感じでした。
 
♪ 続いて20年度生。
 
 
初めに阿波山田55(純米吟醸)から
とろ~、ねっとりとした舌触り、旨味も豊かで試飲させたら一番受けそうな印象です。
 
雄町50
少々酸を高く感じますが、酢の物など酸のある料理とうまく合いそうな印象です。
 
五百万石50(純米吟醸)
複雑な味わいで様々な味の要素が口の中で絡み合うといった印象です。
 
美山錦55(純米吟醸)
香りも落ち着いていましたが、実は酵母が違うとのこと。
川西屋酒造さんは通常協会9号酵母を使用しています。(発酵力も旺盛で果実のような芳りが特徴。最も多く使われています。)
この美山錦については701号酵母といって花のような香りが特徴です。
 
最後は純米秀峰の燗。
今までは口に含んだのは吐き捨てていましたが、これは無意識のうちに、つい飲んでしまいます。
常温でも旨いが燗にするとパッ~と旨味が花開き、「お米から造られている」ということが本当に実感できます。
ご飯がおかずと相性が合うように、様々な料理に合わせてみたい、と想像が膨らみます。
 DSCN0695.JPG
今回の利き酒会では、まだ出荷されていない20年度醸造の火入れも利きましたが、やはりまだ飲み頃には早く、多少飲みづらい部分もありましたが、あえて出品する川西屋酒造さんの度量の大きさに、感服いたしました。
 
早い時期に飲み頃を迎えたければ、造りもそれ相応にすれば可能です。
もっと簡単なのは、炭素ろ過を行えば良いだけのこと。それをせずにじっくりと蔵内で熟成させ、しかも味を整えるためのブレンド(通常は新酒と古酒をブレンドして味のばらつきを防ぐ)をせず、ひたすら時が来るのを待つのです。
ほとんどの蔵元は出来上がったお酒を早く出荷することをを望みますが、結果、それが「熟成」の省略を招いているのです。(これには酒税徴収を目的とする国税局の力が働いているという理由もある)
私は経営者ではないので、その苦労はわからないかも知れませんが、小さな蔵が品質重視のために経営のリスクを背負いながら闘っているという事実を、消費者の皆様にもご理解いただければありがたく思います。
 
田邉 太郎