酒に惚れ込んだスタッフ(お酒のアトリエ吉祥)たちが醸す一期一会のブログです。

日本酒の辛口について その1

お客さまからのご質問で

 

「辛口のお酒ありますか?」

ちょっと知っている方なら

「日本酒度が+○○くらいの」

というお声が圧倒的に多いので、今回は辛口についてちょっと深堀りしてみたいと思います。

 

日本酒っていうと“辛口”が美味しい基準のひとつとして思われている方も多いと思います、日本酒を知らなかった以前の私がそうだったように(笑)

もし理解せず鵜呑みにしていると、お好みのお酒に出会えない可能性が高くなってしまうかもしれません!

 

「甘い辛いって日本酒度でわかるんじゃないの?」と思っているそこのあなた!

まだまだ「日本酒度」という言葉で甘さや辛さを判断されていることも多くいらっしゃいますがそもそも辛いという味覚は存在しないため、アルコールによる痛覚の刺激がそうとされています。(唐辛子の辛さも痛みからきています)

 

つまり清酒における辛口は、甘みの少ないスッキリした味わいの表現として使われていると認識することができます。

 

 

●そもそも、なぜ辛口が良いと思われるようになったのか?

辛口のお酒が良いといわれるようになった理由は様々ですが、「アンチ三増酒」と「スーパードライ効果」が大きな要因と言われております。

 

~お米の足りない時期に生み出された三増酒。~

三増酒とは、出来上がったお酒の量を1とすると、その2倍のアルコールを加えることで3倍量に増やしてしまおうという手法です。

戦時中~戦後に掛けて、お米が貴重品で配給制になっていた頃はお酒の需要に対して供給が追いつかず、密造酒やメチルアルコール入りの闇酒といった粗悪なお酒が出回るようになりました。

そうすると国民の健康を損ねるだけでなく酒税の徴収にも影響が出てしまう為、そんな市場での供給不足を補うべく、出来上がったお酒に無味無臭の醸造アルコールを大量に加えて増量、薄まった分を糖類や酸味料で後から補って味わいを調整したお酒が生み出されたのです。

 

それまでは酒税を安定的に徴収するため、腐造させない造り=安全醸造が絶対とされていたため、腐造しそうな醪の救済措置として醸造アルコールを加えて発酵を止め、味わいを調整することでなんとかお酒にしようというわけです。

 

 

また、出来上がったお酒が雑菌汚染してお酒が白く濁ったりする“腐造(ふぞう)”を見分ける基準として「色がついていると減点」という評価基準が生まれました。

そうして鑑評会でも色のついていないお酒が評価されるようになると、今度は減点を防ぐ為に活性炭濾過で色を抜くことが優先され、それまでよりも大量に活性炭が使われるようになりました。すると、色だけでなく本来お酒のもっていた旨みの部分も一緒にとってしまうので、結果的に味わいの要素が少ない「淡麗」なスッキリとしたお酒が良いものと言われるようになりました。

 

その後、1960年以降は逆にお米が余り始めたため、三増酒からの脱却が始まります。

大正~昭和にかけて濃醇辛口→淡麗甘口と変移していた時代の流れのなかで、アルコール添加量を抑えた「本醸造酒」やお米だけで醸した「純米酒」が発売されるようになります。

それまで三増酒のような糖類を加えた甘口のお酒への反動からか一気に辛口ブームが到来。「淡麗辛口ブーム」が起こり、そこに拍車をかけたのが記録的なヒット商品となった「アサヒスーパードライ」の影響を受けて、清酒でも辛口が好まれるようになったといわれています。

 

余談ですが、淡麗辛口といえば新潟!といわれるくらいに成長した影には、新潟の越後杜氏の集団には「炭屋」と呼ばれる活性炭濾過を専門とする職人が多くおり、活性炭濾過の技術に長けていたことも要因とされています。

 

そんな「淡麗辛口ブーム」もあって、辛口が良いというのも分かるのですが、『歴史上、最も日本酒が美味しい時代』と言われる昨今においては、10年前では考えられないくらい多種多様なお酒が誕生してきており、甘口、辛口だけでは表現しきれないほどバリエーションが増えてきています。

 

 

さてさて、では次回は“辛口”と言わないほうが良いという理由も含めて書いていきたいと思います。

日本酒の辛口について その2

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